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横浜地方裁判所 昭和58年(わ)60号 判決

裁判所書記官

内山三男

(一)

本店所在地 横浜市中区伊勢佐木町二丁目八五番地

有限会社萬善物産

右代表者代表取締役

西原敏光こと 韓在喆

(二)

本店所在地 横浜市中区伊勢佐木町二丁目八五番地

有限会社三洋観光開発

右代表者代表取締役

西原敏光こと 韓在喆

(三)

本店所在地

(登記簿上)

新潟県新潟市春日町一一番九号

(事実上)

同県 同市 上所島二九四番地

有限会社三愛観光開発

右代表者代表取締役

富田憲治

(四)

国籍 韓国

住居

横浜市南区唐沢二丁目五番九号

会社役員

西原敏光こと

韓在喆

一九三六年七月五日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官久我逸夫出席のうえ審理をとげ、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社萬善物産を罰金一五〇〇万円に

被告人有限会社三洋観光開発及び同有限会社三愛観光開発を各罰金一〇〇〇万円に

被告人韓在喆を懲役一年に

処する。

本裁判確定の日から四年間被告人韓在喆の右刑の執行を猶予し、右猶予の期間中同被告人を保護観察に付する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社萬善物産は、横浜市中区伊勢佐木町二丁目八五番地(昭和五五年四月一一日以前は同区寿町三丁目一〇番一三号)、被告人有限会社三洋観光開発は、同区伊勢佐木町二丁目八五番地(同年四月一〇日以前は同区弁天通四丁目六四番地)、被告人有限会社三愛観光開発は、新潟市春日町一一番九号にそれぞれ本店を置き、特殊浴場等の経営を目的とする法人であり、被告人韓在喆は、右有限会社萬善物産代表取締役並びに右有限会社三洋観光開発及び右有限会社三愛観光開発の実質上の代表者として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人韓在喆は、

第一  被告人有限会社三洋観光開発の業務に関し、法人税を免れようと企て、入浴料収入の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、

一  昭和五四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における同会社の実際の所得金額が六三三九万五〇七六円で、これに対する法人税額が二三九八万一八〇〇円であるにもかかわらず、同五五年二月二九日、横浜市中区山下町三七番地九号所在の所轄横浜中税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が三五一八万六八九六円で、これに対する法人税額が一三〇九万八二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税一〇八八万三六〇〇円を免れ、

二  同五五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における同会社の実際の所得金額が四八一三万三八八四円で、これに対する法人税額が一八一三万八一〇〇円であるにもかかわらず、同五六年二月二八日、前記横浜中税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二六六一万六〇四五円で、これに対する法人税額が九五三万一三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税八六〇万六八〇〇円を免れ、

第二  被告人有限会社萬善物産の業務に関し、法人税を免れようと企て、前同様の方法により所得を秘匿した上、

一  同五四年六月一日から同五五年五月三一日までの事業年度における同会社の実際の所得金額が八七四一万三〇二八円で、これに対する法人税額が三三九一万七七〇〇円であるにもかかわらず、同五五年七月三一日、前記横浜中税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一八一四万八三六四円で、これに対する法人税額が六二一万一七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税二七七〇万六〇〇〇円を免れ、

二  同五五年六月一日から同五六年五月三一日までの事業年度における同会社の実際の所得金額が一一六七万三〇三九円で、これに対する法人税額が三五六万九七〇〇円であるにもかかわらず、同五六年七月三一日、前記横浜中税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が九六万九四五九円で、これに対する法人税額が零である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税三五六万九七〇〇円を免れ、

第三  被告人有限会社三愛観光開発の業務に関し、法人税を免れようと企て、前同様の方法により所得を秘匿した上、

一  同五四年七月一日から同五五年六月三〇日までの事業年度における同会社の実際の所得金額が四七四四万五八六六円で、これに対する法人税額が一八一三万八〇〇〇円であるにもかかわらず、申告期限の同五五年八月三一日までに、新潟市営所通二番町六九二番地の五所在の所轄新潟税務署において、同税務署長に対し、法人税確定申告書を提出せず、もって不正の行為により、法人税一八一三万八〇〇〇円を免れ、

二  同五五年七月一日から同五六年六月三〇日までの事業年度における同会社の実際の所得金額が二三七一万二九三〇円で、これに対する法人税額が八九九万九〇〇〇円であるにもかかわらず、申告期限の同五六年八月三一日までに、前記新潟税務署において、同税務署長に対し、法人税確定申告書を提出せず、もって不正の行為により、法人税八九九万九〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示各事実につき

一  被告人韓の当公判廷における供述

一  被告人韓の検察官に対する供述調書

一  被告人韓の大蔵事務官に対する昭和五七年八月二三日付、同年九月一〇日付(検察官証拠請求番号一九八)、同年一〇月一八日付(同二〇四)、同月一九日付、同月二八日付(同二〇七)及び同年一一月二二日付(同二一一)各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の告発書

第一の各事実につき

一  被告人韓の大蔵事務官に対する昭和五七年一〇月九日付、同月一八日付(検察官証拠請求番号二〇五)、同月二八日付(同二〇八)及び同年一一月二二日付(同二一〇)各質問てん末書

一  金時鐘及び丸山茂一の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の有限会社三洋観光開発脱税額計算書二通

一  税理士作成の証明書(検察官証拠請求番号八)

一  大蔵事務官作成の有限会社三洋観光開発脱税額計算書説明資料二通

一  大蔵事務官作成の入浴料収入調査書、給料手当調査書、福利厚生費調査書、旅費交通費調査書、交際接待費調査書、備品消耗品費調査書、新聞図書費調査書、雑費調査書、賃借料調査書、雑収入調査書、交際費損金不算入額調査書、受取利息調査書、事業税認定損調査書、水道光熱費(その他所得)調査書、交際費損金不算入額(その他所得)調査書、交際接待費(その他所得)調査書、雑費(その他所得)調査書、計算誤謬(その他所得)調査書、預金調査書、普通預金調査書、定期預金調査書、前払費用調査書、貸付金調査書、建物調査書、什器備品調査書、未払金調査書、未払費用調査書、預り金調査書、長期借入金調査書、未納事業税調査書、交際費損金不算入額(貸借科目)調査書、金田勘定調査書、西原勘定調査書及び交際費損金不算入額(貸借科目、その他所得)調査書(検察官証拠請求番号三六から六九まで)

第一の一の事実につき

一  大蔵事務官作成の有限会社三洋観光開発法人税額計算書(検察官証拠請求番号二四)

一  押収にかかる法人税確定申告書一袋(昭和五八年押第一三八号の四)

同二の事実につき

一  大蔵事務官作成の有限会社三洋観光開発法人税額計算書(検察官証拠請求番号二五)

一  押収にかかる法人税確定申告書一袋(前記押号の三)

第二の各事実につき

一  被告人韓の大蔵事務官に対する昭和五七年一月二一日付、同年二月一八日付、同年四月九日付、同月一九日付(検察官証拠請求番号一八九)、同月二七日付及び同年一一月二二日付(同二〇九)各質問てん末書

一  金時鐘及び丸山茂一の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の有限会社萬善物産脱税額計算書二通

一  税理士作成の証明書(検察官証拠請求番号九)

一  大蔵事務官作成の有限会社萬善物産脱税額計算書説明資料二通

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、入浴料収入調査書、役員報酬調査書、給料手当調査書、福利厚生費調査書、広告宣伝費調査書、旅費交通費調査書、通信費調査書、接待交際費調査書、支払手数料調査書、燃料費調査書、賃借料調査書、修繕費調査書、諸会費調査書、消耗品費調査書、水道光熱費調査書、衛生費調査書、雑費調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、損金不算入交際費調査書、事業税認定損調査書、預金調査書、当座預金調査書、普通預金調査書、未収入金調査書、前払費用調査書、金田勘定調査書、西原勘定調査書、商品調査書、建物調査書、什器備品調査書、土地調査書、保証金調査書、買掛金調査書、支払手形調査書、未払金調査書、未納事業税調査書、長期借入金調査書、損金不算入交際費調査書及び繰越利益金調査書(検察官証拠請求番号七〇から一一〇まで)

第二の一の事実につき

一  大蔵事務官作成の有限会社萬善物産法人税額計算書(検察官証拠請求番号二六)

一  押収にかかる法人税確定申告書一袋(前記押号の二)

同二の事実につき

一  大蔵事務官作成の有限会社萬善物産法人税額計算書(検察官証拠請求番号二七)

一  押収にかかる法人税確定申告書一袋(前記押号の一)

第三の各事実につき

一  被告人韓の大蔵事務官に対する昭和五七年四月一九日付(検察官証拠請求番号一八八)、同年七月一四日付、同年九月一〇日付(同一九七)、同年一〇月七日付、同月一六日付及び同年一一月二二日付(同二一〇)各質問てん末書

一  富田憲治の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の有限会社三愛観光開発脱税額計算書二通

一  税理士作成の証明書(検察官証拠請求番号一〇)

一  大蔵事務官作成の有限会社三愛観光開発脱税額計算書説明資料二通

一  大蔵事務官作成の入浴料収入調査書、雑収入調査書、受取利息調査書、損金不算入交際費調査書、役員報酬調査書、給料手当調査書、水道光熱費調査書、通信費調査書、交際接待費調査書、修繕費調査書、事務費調査書、旅費交通費調査書、広告宣伝費調査書、福利厚生費調査書、消耗品費調査書、燃料費調査書、サービス費調査書、支払家賃調査書、雑費調査書、事業税認定損調査書、手数料調査書、開業費調査書、現金調査書、当座預金調査書、定期預金調査書、電話加入権調査書、営業設備調査書、西原敏光勘定調査書、損金不算入交際費調査書、未払金調査書、未納事業税調査書、資本金調査書、繰越利益調査書、個人収支等(西原敏光分)調査書、個人預金(西原敏光分)調査書、個人収支等(金田時男分)調査書及び個人預金(金田時男分)調査書(検察官証拠請求番号一一一から一四七まで)

第三の一の事実につき

一  大蔵事務官作成の有限会社三愛観光開発法人税額計算書(検察官証拠請求番号二八)

同二の事実につき

一  大蔵事務官作成の有限会社三愛観光開発法人税額計算書(検察官証拠請求番号二九)

(量刑の理由)

本件取調ずみの各証拠により認められる諸般の情状を総合すると、なかんずく、本件における法人税ほ脱額が極めて多額にのぼることに鑑みれば、被告人各会社に対する検察官の求刑はまことに相当であるといわねばならないので、そのとおり量刑することとする。

しかしながら、被告人韓については、実行行為者としての刑責には重大なものがあるとはいえ、弁護人が弁論において主張する諸般の情状を考慮するときは、なかんずく、前刑の執行猶予期間中の犯行とはいえ、前刑は売春防止法違反罪によるものであり、本件と罪質を異にすることを考慮するときは、本件において一年をこえる懲役刑を言渡して実刑に服させ、かつ、前刑の執行猶予も取消されて服役に至る措置をとることは重きに過ぎると考えられるので、懲役一年の量刑にはやや軽きに過ぎる感がないのではないものの再度の執行猶予の許容される限度の刑として主文のとおり量刑し、かわりに保護観察付執行猶予の期間をやや長期にしたものである。

(法令の適用)

法律に照らすと、被告人韓の判示各所為は、いずれも法人税法(第一の一、二、第二の一及び第三の一については、昭和五六年法律第五四号による改正前のもの。その余については、右法律による改正後のもの)一五九条一項に該当するので所定刑中懲役刑を選択し、右は、刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により刑及び犯罪の最も重い判示第三の二の罪の刑に法定の加重をした罰期範囲内で同被告人を懲役一年に処し、同法二五条二項により本裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予し、同法二五条の二、一項後段により右猶予の期間中同被告人を保護観察に付することとし、被告人各会社については、法人税法一六四条一項により行為者を罰するほかに被告人韓に適用した当該法人税法罰条所定の罰金刑を科することとするが、第一の一、二、第二の一及び第三の一、二の罪については、当該法人税法一五九条二項、第二の二の罪については、当該法人税法一五九条一項に各所定の罰金刑を科することとし、第一、第二及び第三の罪は、各一及び二の罪が刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項によりそれぞれ各罪所定の罰金の合算額の範囲内で処断することとし、被告人有限会社萬善物産を罰金一五〇〇万円に、被告人有限会社三洋観光開発及び同有限会社三愛観光開発を各罰金一〇〇〇万円に処することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 奥村誠)

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